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口先だけの甘い言葉:ガーナとコートジボワールにおける森林破壊は依然として高い水準にある
2022年2月、マイティー・アースは、『口先だけの甘い言葉:チョコレート業界は、カカオのサプライチェーンにおける森林破壊を終わらせるための約束を果たしていない』と題した調査報告書を発表した。同報告書では、西アフリカとその周辺におけるカカオ産業による森林破壊を止めるという、カカオバイヤーとチョコレート企業による誓約が未達成であることが焦点となった。マイティー・アースによる調査の結果、ガーナとコートジボワールの主要なカカオ生産地において、熱帯林の破壊が進行していることが判明した。
この調査から1年後、マイティー・アースは衛星データを再度確認したが、悲しいことに、熱帯林伐採の全体像は改善されていないことが判明した。2022年のコートジボワールとガーナのカカオ生産地における森林破壊は、依然として高い水準にあった。RADDアラート(「森林破壊検知のためのレーダーアラート」)と呼ばれる、ほぼリアルタイムで森林破壊状況を検知するレーダー波によるモニタリングでは、コートジボワールにおいて2019年以降で最も多い8,000ヘクタール以上の森林消失面積が記録された。ガーナでは、RADDアラートにより、2021年に消失した森林面積に匹敵する1万2,000ヘクタール以上の森林が消失していることが明らかになった。
カカオ業界が森林破壊について対策を講じることを誓約して以降、現在すでに数年が経過している。そのためこれらの森林消失の現状は、懸念されることなのだ。2017年11月の国連気候変動会議において、コートジボワールとガーナの政府は、カカオの取引業者や大手チョコレート企業(ネスレ、ハーシーズ、モンデリーズ、ユニリーバ、マースを含む)とともに、「カカオと森林イニシアティブ」(CFI)に署名した。続いて2019年初頭には詳細な行動計画が発表され、これにより、西アフリカにおけるカカオ農園の拡大による森林破壊を食い止めるとともに、劣化した生態系の再生に取り組むため、カカオのサプライチェーンに関わる企業が断固たる措置を取ることが期待されるようになった。
しかし残念ながら、企業も政府もこの時以来、何も実行していないことが証拠により示されている。コートジボワールでは、カカオ栽培地域における森林消失面積が2019年の5,500ヘクタールから2022年の8,400ヘクタールへと着実に増加している。ガーナでは、森林消失の傾向は一貫していないものの、同じように悲惨な状況である。カカオ栽培地における森林消滅面積は、2019年以降平均で1万2,000ヘクタールとなっていたが、2022年には平均1万2,350ヘクタールとなった。
過去30年間で、ガーナでは65%、コートジボワールでは90%もの森林面積が失われたと推定されるため、これはとりわけ深刻な問題である。 2018年の推定では、ガーナのカカオ生産地には湿潤熱帯林の原生林はわずか100万7000ヘクタール、コートジボワールには103万5000ヘクタールしか残っていないため、これらの損失は非常に大きなものである。この4年間で、ガーナでは4.7%、コートジボワールでは2.6%の森林面積が失われたことになる。
さらに、RADDアラートに基づく森林消失面積の予測は、密集した湿潤の熱帯林のみを含む熱帯林ベースマップのモニタリングに基づくものであるため、かなり保守的な数字だと思われる。CFIとコートジボワール政府が採用する森林モニタリングの「公式」プラットフォーム『IMAGES』は、RADDアラートよりも多くの森林をモニタリングしているが、これによれば状況はさらに危機的だ。IMAGESプラットフォームのデータによると、コートジボワールのカカオ栽培地域では2022年に5万4,000ヘクタール以上の森林消失が検出されており、2020年と2021年の消失面積を上回ったことが明らかとなっている。
森林破壊に繋がる農産物をEU市場で販売することを禁ずる新たな法律が間もなく施行されるため、西アフリカの企業や政府は、カカオ生産地域の森林保護に関するこれまでの誓約を真剣に受け止めざるを得なくなる。マイティー・アースは、CFIとその参加組織・企業らに対し、公開された森林破壊モニタリングシステムの導入、カカオ調達に関するサプライチェーン情報の公開、持続可能なカカオ栽培の支援、劣化した森林景観の再生に積極的に取り組むことを改めて要請する。
マイティー・アースのデータおよび計算の詳細については、マイティー・アースの「カカオ・アカウンタビリティ・マップ」でコートジボアールとガーナについて再度ご覧いただくか、[email protected] までご連絡ください。
バングラデシュ・マタルバリにおける日本の石炭火力発電所事業の中止に関するマイティー・アースの声明
2022年6月23日
昨日、日本政府は海外石炭ファイナンスの終了を発表し、マタバリ2石炭火力発電所事業の中止が決定しました。マタバリ2石炭火力発電所事業は、日本が石炭ファイナンスを辞められずにいることの象徴でした。世界的なキャンペーンが展開された後、2月28日に住友商事が建設請負から撤退したことで、このプロジェクトが中止される可能性が高くなっていました。
「これは、日本の海外石炭ファイナンスの時代に終止符を打つ、画期的な勝利です。 バングラデシュの人々が、大気汚染、有毒な水銀汚染、そしてこの発電所が引き起こすであろう債務の増加という負担に苦しまなくてすむようになったことを祝います」と、マイティー・アースの日本プロジェクト統括マネージャー、ロジャー・スミスは述べています。「日本は、バイオマス、水素、アンモニアなど、排出量を減らさずに他国に移転するような表裏のある技術に頼らずに、国内外の既存の石炭火力発電所の閉鎖を早める必要があります」。
マイティー・アースは、気候変動と森林破壊を阻止するために活動する世界的なアドボカシー団体です。2019年12月、マイティー・アースは、住友商事が汚染型石炭・木質バイオマス事業への依存をやめることを要求するグローバルキャンペーンを開始しました。バングラデシュ、日本、そして世界中の同志と緊密に連携し、マタバリ・プロジェクトの中止と、クリーンで再生可能なエネルギーへの迅速な移行を求めました。
国際NGOが「チョコレート成績表2022」を発表〜日本企業から6社が参加、カカオのトレーサビリティ確保に課題〜
リンク:
世界チョコレート成績表(2022年)
世界チョコレート成績表(2021年)
採点方法
プレスリリース
2022年4月8日午前9時までエンバルゴ
国際NGOが「チョコレート成績表2022」を発表〜日本企業から6社が参加、カカオのトレーサビリティ確保に課題〜
欧米に比べ日本企業による環境・人権リスクへの対応は不十分
2022年4月8日 ー「世界チョコレート成績表」は、人権NGOビー・スレイバリー・フリー、マイティ・アース、熱帯林行動ネットワークなど29団体が参加するネットワーク団体「ザ・チョコレート・コレクティブ」によって、チョコレートの取引業者、加工業者、製造業者を含む世界最大のチョコレート企業38社(注1)の社会的・環境的影響を評価したものです。
チョコレート業界が直面する6つの最も緊急な持続可能性の課題(トレーサビリティと透明性、生計維持所得、児童労働、森林破壊と気候、アグロフォレストリー、農薬管理)について評価しました(注2)。
日本の企業では、不二製油グループ(ブロマー)、伊藤忠商事、明治、森永製菓、大東カカオ、江崎グリコの6社が調査に協力しています(注3)。日本企業の中では不二製油グループ(ブロマー)が一番高い評価を得ていますが、海外の企業に比べて遅れを取っています。
その他の日本企業についても、特に「中間業者を介するサプライチェーン(間接調達)」のトレーサビリティを確認していないケースが多く、その結果として他のカテゴリーの評価や総合評価も低くなっています。
「トレーサビリティと透明性」の項目において紫のハート(さらなる取り組みが必要)を獲得した伊藤忠商事でさえ、「2030年までにサステナブル・カカオ豆100%の調達」を目標にしています。「チョコレート成績表」の評価にも見られるように、日本企業には、早急にカカオ調達のトレーサビリティを見直し、カカオ生産が抱える問題を広く理解し、迅速な対応が求められています。
JATANの榎本氏は「日本の企業は、パーム油調達のトレーサビリティの確認は進んでいますが、カカオ調達ではまだまだ欧米に遅れています。トレーサビリティの管理はカカオ生産の裏に潜む様々な問題を把握する第一歩でもあり、大変重要ですが、日本企業には十分に理解されていないようです。」と述べています。
注1)マース、リンツ、ネスレ、モンデリーズ(キャドバリー)、フェレロ、明治、ハーシーなどの大手企業が含まれ、世界のチョコレート製品の80~90%を生産しています。
注2)「チョコレート成績表」は、世界のカカオの約75%が生産されている西アフリカを起点とした生産とサプライチェーンに着目しています。日本のカカオ豆の輸入額(2019年)の 約7割はガーナからのものです。
注3)日本はアジア最大のチョコレート市場で、2020年の小売売上高は5470億円(全日本菓子協会)を記録しています。しかし、日本企業は調査対象となった企業全体から見て最下位付近という評価になりました。
森林減少
これまでのマイティ・アースのデータ分析により、注目された「カカオと森林イニシアチブ(The Cocoa and Forests Initiative, CFI)」の発足から4年以上が経過した現在も、アフリカのカカオ生産上位国では、西アフリカでカカオ生産のために広大な面積の貴重な森林が破壊されていることが判明しています。この貴重な森林の消失は、この地域の小規模農家がカカオから生計を立てられず、拡大を余儀なくされていることが原因であることが多いのです。
マイティ・アースのシニア・アドバイザーとオレゴン州立大学地球海洋大気科学部のサミュエル・マウター氏は、「小規模な実証プロジェクトの時代は終わり、現在、多くの企業が農家の貧困に対処し、カカオ農家の生計を改善するための大きな取り組みを始めています」と述べています。「少なくとも、チョコレートブランドがこの問題を認識していることを示すものであり、これは進歩です。しかし、農家の家庭の貧困が児童労働、化学物質の使用、森林の転換を促すため、企業全体の協力体制を改善する必要があります。」と述べています。
今年、調査団体が一歩前進として確認できた点は、カカオと他の樹木を一緒に育てるアグロフォレストリーシステムによるカカオ生産への取り組みが大幅に増加したことです。このシステムには、カカオの生産量を維持しながら農家の多様化を支援し、同時に地域の生物多様性を回復・向上させるなど、多くの利点があります。
例えばネスレは今年、2022年末までに森林破壊地域に280万本の木を植えることを約束しました。
児童労働
昨年の調査以降、多くの分野で改善が見られる一方で、児童労働に巻き込まれている約156万人の子どもたちの問題については、この問題への取り組みを繰り返し呼びかけ、2020年の大規模な学術調査によって問題の規模が明らかになったにもかかわらず、まだ道半ばであると調査団体は述べています。
「西アフリカで見られる児童労働の多くは、危険な形態の児童労働です。重い荷物を運んだり、危険な装置を使ったり、化学物質にさらされたりと、子どもは危険にさらされています」と、「チョコレート成績表」をまとめたオーストラリアの人権NGOビー・スレイバリー・フリーのファズ・キット氏は述べています。
「チョコレート業界の大企業は毎年、児童労働や、皮膚に火傷を負わせ呼吸に影響を及ぼす化学薬品にさらされる膨大な数の子どもたちについて、何か対策を講じると私たちに約束しています。私たちは、進歩が遅すぎる、チョコレートを作るために子どもたちを毒物に曝すのはやめなければならないと言っています。」
「企業が農家にきちんとお金を払って、生計維持所得を得られるようにすれば、カカオの生産に従事させられる子どもは減り、危険な農薬で手間を省こうとする農家も減るはずです。」
優良賞とワースト賞
今年、フェレロは、ハーシー、ユニリーバ、リッターなど、レインフォレスト・アライアンスやフェアトレードの認証を受けたカカオを100%に近い形で提供している企業の仲間入りを果たしました。
「認証は完璧なものではありませんが、多くの場合、企業の持続可能性の取り組みにおける前向きな第一歩となります」とファズ・キットは述べています。
ストーク、スターバックス、ゼネラル・ミルズは、「チョコレート成績表」への協力を拒否し続けたため、調査団体の「不参加賞」を授与されました。さらにストークは、同社のカカオサプライチェーンにおける方針と慣行についての透明性の欠如と、同社に対する市民社会の苦情を考慮して、全体的に最低の評価を受け、今年の「ワースト賞」を授与されました。
「もし、これらの企業がチョコレートのサプライチェーンの持続可能性を向上させるために前進しているのであれば、私たちやその顧客および投資家はそれについてもっと聞きたいと思うことでしょう」とキットは述べています。
「ザ・チョコレート・コレクティブ」について
ザ・チョコレート・コレクティブは、ビー・スレイバリー・フリーが率いる団体であり、チョコレート産業の変革に取り組む大学、コンサルタント、NGOを含む以下の29団体が参加しています。
調査チーム:Be Slavery Free, Macquarie University (Australia), Wollongong University (Australia), The Open University (UK)
アドバイザー:Forest Trends, International Cocoa Initiative, Pesticide Action Network, Sudwind Institute, VOICE Network
協力団体:Abolishion, ACRATH, Asset Campaign, Baptist World Aid Australia, Child Labor Coalition, EcoCare Ghana, Estwatch, European Freedom Network, Freedom United, Green America, 熱帯林行動ネットワーク, El Llamado del Bosque, マイティ・アース, National Consumer League, National Wildlife Federation, Netzwerk gegen Menschenhandel, RAIN, Roscidet, SIM for Freedom, Unseen.
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)について
熱帯林をはじめとした世界の森林の保全のために、森林破壊を招いている日本の木材貿易と木材の浪費社会を改善するための政府、企業、市民の役割を提言し、世界各地の森林について、生物多様性や地域の住民の生活が守られるなど、環境面、社会面において健全な状態にすることを目指しています。団体ウェブサイトには、マイティ・アースが2017年に発表した「Chocolate ‘s Dark Secret」の内容を日本語でまとめた「チョコレートについての基本情報」を用意していますので、ご参考までにお使いください。
マイティ・アースについて
マイティ・アース (https://www.mightyearth.org/chocolate/)は、命ある地球の保護活動を行うグローバルなアドボカシー組織です。自然のために地球の半分を守り、命が繁栄できる気候を確保することを目標としています。 当組織のチームは、世界に張り巡らされたパーム油、ゴム、カカオ、飼料などのサプライチェーンにおいて森林破壊と気候変動をもたらす汚染を大幅に削減するよう大手企業を説得し、熱帯地方の先住民族や地域住民の生活向上を図ることにより、変革を実現してきました。
ご連絡先:サミュエル・マウター、ロジャー・スミス [email protected] (日本語対応可)
ビー・スレイバリー・フリーについて
ビー・スレイバリー・フリーは、市民団体、コミュニティー、およびその他の組織からなる連盟で、ともにオーストラリア、オランダ、そして世界各地で現代版の奴隷労働の防止、廃止、撤廃に向け活動を行っています。ビー・スレイバリー・フリーには、現代版の奴隷労働の防止、撤廃、対策を現地で行ってきた経験があります。特に、サプライチェーンにおける奴隷労働に光を当てることに注力しています。ビー・スレイバリー・フリーが生み出した動きにより、オーストラリアでは現代奴隷法の可決が実現しました。2007年以降はチョコレート業界との取り組みを行い、カカオ生産における児童労働と奴隷労働の問題への対応を求めてきました。ビー・スレイバリー・フリーに関してさらなる情報は、https://beslaveryfree.com で公開しています。
ご連絡先:ビー・スレイバリー・フリー(オーストラリア)ファズ・キット+61(0)407-931-115(オーストラリア東部標準時)[email protected]
リンク:
世界チョコレート成績表(2022年)
世界チョコレート成績表(2021年)
採点方法
以上
新調査報告発表:大手チョコレート企業、森林破壊停止の誓約を実行せず
新調査報告「口先だけの甘い言葉:チョコレート業界は、カカオのサプライチェーンにおける森林破壊を終わらせるための約束を果たしていない」
〜業界の誓約から4年経った今も、カカオ栽培によって、保護区の破壊、チンパンジーやゾウの生息地消失などを含む森林減少の悪化が明らかに〜
2022年2月14日 – マイティー・アースが新たに実施したデータ分析調査により、「カカオと森林イニシアティブ(CFI)」(注1)開始から4年以上が経過した今も、アフリカの主要なカカオ生産国では、カカオ栽培のために広範囲にわたる森林破壊が続いていることが明らかになった。新調査報告「口先だけの甘い言葉:チョコレート業界は、カカオのサプライチェーンにおける森林破壊を終わらせるための約束を果たしていない」によると、業界が2019年に行動計画を発表した後の3年間で、カカオ生産地域における森林消失面積はコートジボワールで19,421ヘクタール、ガーナで39,497ヘクタールに及んでいる。この合計面積は、東京23区の面積に匹敵する。
命ある地球の保護活動を行うグローバルなアドボカシー組織マイティー・アースのCEO、グレン・ホロウィッツ(Glenn Hurowitz)はこう述べる。「このレポートは、カカオ産業の望ましくない面を明らかにし、チョコレート製品と森林破壊の関係を直ちに断ち切る必要があることを示しています。ネスレ、ハーシーズ、モンデリーズ、マース、不二製油、明治などのチョコレート企業は、口先だけの約束をやめ、CFI参加各国政府との協力のもと、森林破壊に対するオープンかつ効果的な共同モニタリングメカニズムを今年中に確立しなければなりません。このような破壊はすべて完全に防げるものであり、ずっと前に手を打つべきでした。手をこまねいているうちに、森林は消え続け、野生生物は死んでゆき、地域のコミュニティは苦境に陥っているのです」
レポートが示した重要ポイント
- CFIにおいて、チョコレート企業と各国政府が、森林減少を引き起こすカカオ農園の新規開発禁止への取り組みを約束してから4年半が経つが、全体的に見て森林破壊の規模は依然として過去最高水準に近いままである。
- CFIが2019年1月に行動計画を発表した後も、カカオ生産地域における森林消失面積はコートジボワールで19,421ヘクタール、ガーナではなんと39,497ヘクタールにも及んでおり、森林消失率は9%という驚くべき水準になっている。2019年から2021年末までの3年間に2カ国で失われた熱帯林の面積を合わせると、東京23区の面積に匹敵する。
- ガーナの場合、2019年1月~2020年末の森林消失面積は、2001年~2010年の7倍、2011年~2019年の1.5倍に達した。
- コートジボワール全体では、2019年1月以降の平均森林消失面積は、2001年~2017年の3倍、2000年代平均の3.4倍に達した。
- コートジボワールとガーナの保護区全域では今も森林破壊が進んでいることが分かっており、衛星データの解析やマイティー・アースによるコートジボワールでの現地調査の結果、カカオ栽培地拡大がこのような森林侵食の主な要因であることが明らかになっている。
マイティー・アース西アフリカ代表のアムールライ・トゥーレ(Amourlaye Toure)はこう述べる。「カカオ栽培のための森林破壊はいまだに続いており、保護区内でさえ憂慮すべき規模で進行しています。『カカオと森林イニシアティブ(CFI)』が森林破壊を特定できず、目標を達成できないことにより、地域コミュニティの安定は失われ、絶滅危惧種野生生物は危険にさらされ、チョコレート産業の二酸化炭素排出量は増加しています。カカオ業界はマイティー・アースと同じ森林破壊追跡・防止ツールを持っており、財源に至ってはマイティー・アースを超えるものを持っています。しかし、業界の意志が限定的なものにとどまり、透明性・説明責任が欠如していることが、今も最大の障害となって進展を阻んでいるのです」
レポートで示された提言
- チョコレート企業、カカオ貿易業者、各国政府は、カカオのサプライチェーン関連情報を共有し、これを衛星データ画像と組み合わせて、オープンで透明性の高い森林破壊の共同モニタリングメカニズムを2022年中に確立する必要がある。このような仕組みは、カカオ栽培地拡大による森林侵食を防ぐため、また、ガーナとコートジボワールの小規模農家の生活改善に向けての取組みを行うための集団的アクションの手段となるだろう。
- CFIは、カカオ栽培のための新たな森林破壊を2年以内にゼロにすることを目標とし、ガーナとコートジボワールにおける森林破壊削減の進捗状況に関する報告を公開すべきである。
- 大手チョコレート企業やカカオ貿易業者は、ガーナやコートジボワールの傷ついた森林や生物多様性の回復に積極的な役割を果たすべきである。2025年までにカカオの少なくとも50%を、アグロフォレストリーを行う栽培者から調達することを約束し、カカオ協同組合や各国政府機関との協力のもと、小規模農家のカカオ単一栽培から多様化された農業システムへの転換を支援する必要がある。
- コートジボワール政府は、早急に保護区の境界を確認し、コミュニティや市民社会組織を透明な形でモニタリングに参加させることにより、新たな森林破壊の阻止に努めるべきである。
- 欧州連合、日本、米国の当局は、森林破壊につながるカカオまたはカカオ由来製品の消費者市場への輸入を防ぐため、徹底したデューデリジェンス・チェックを企業に義務付ける法律を導入するべきである。
熱帯林行動ネットワーク運営委員の中司喬之氏は、「大手チョコレート企業は、トレーサビリティの確認を行った上で、全てのサプライヤーについて企業グループレベルで、NDPE(森林減少禁止、泥炭地開発禁止、搾取禁止)方針の採用と実施を求め、森林減少への対処を進めていくことが必要です。ガーナからのカカオ関連産品の輸出先として日本は第二位、日本側から見た輸入先として7割以上を占めており、ガーナでの森林破壊に対しては重要な責任を負っていると言えます。今すぐにでも取り組むべき課題です」と述べている。
マイティー・アースは、衛星データ解析と現地調査を組み合わせ、カカオ栽培のために熱帯林伐採が進行している証拠を示した。失われた熱帯林には、チンパンジーやコビトカバなどの絶滅危惧種野生動物の生息に不可欠な指定保護区内の森林も含まれる。これらの森林はまた重要な炭素吸収源であり、気候変動と生物多様性の喪失の進行を遅らせるのに不可欠である。
(注1)2017年、イギリスのチャールズ皇太子の呼びかけで、世界の主要なチョコレート企業35社(日本からは株式会社明治と不二製油株式会社が参加)と世界カカオ基金、コートジボワール、ガーナ両政府などが参加し、カカオ生産による森林破壊を抑止するために「カカオと森林イニシアチブ(The Cocoa and Forests Initiative, CFI)」の設立を発表した。CFIは、2018年に国家実施計画(コートジボワール、ガーナ)、さらに2019年には企業向け行動計画(コートジボワール、ガーナ)を発表した。行動計画には「カカオセクターでの森林減少や森林劣化を新たに引き起こす活動を禁止し防止することを約束する」との文言も含まれている。
マイティー・アースは、2017年にチョコレート産業と森林減少の関係を示したレポート「CHOCOLATE’S DARK SECRET」を作成し、世界的に大きな注目を受けた。こうした批判を受けて、CFIは設立された。
マイティー・アースについて
マイティー・アース (www.mightyearth.org)は、命ある地球の保護活動を行うグローバルなアドボカシー組織です。自然のために地球の半分を守り、命が繁栄できる気候を確保することを目標としています。 当組織のチームは、世界に張り巡らされたパーム油、ゴム、カカオ、飼料などのサプライチェーンにおいて森林破壊と気候変動をもたらす汚染を大幅に削減するよう大手企業を説得し、熱帯地方の先住民族や地域住民の生活向上を図ることにより、変革を実現してきました。
新報告書 『住友商事が引き起こす環境破壊 :石炭とバイオマスが影を落とす日本の未来』
新報告書
『住友商事が引き起こす環境破壊 :石炭とバイオマスが影を落とす日本の未来』
(2019/12/10 14:00 東京)
国際社会がマドリードにおいて、気候変動との戦いを今後どう進めていくか議論している 最中、石炭や木質バイオマスといった汚く間違ったエネルギーを推進し投資する大手企業が、日本の政策によって力を強めているということが明るみになりました。マイティー・アースの最新報告書『住友商事が引き起こす環境破壊:石炭とバイオマスが影を落とす日本の未来』は、東京に本社を置く大手総合商社が、いかに世界規模の石炭やバイオマスのネットワークの中心に位置取り、地球上で最も有害な燃料の採掘、伐採、資金調達、輸送、燃焼に携わっているかを鮮明に描いています。米国南東部からカナダのブリティッシュコロンビア州そしてベトナムまで、住友商事は日本の発電事業のために世界の森林を危機に陥れています。
「住友商事は、国内外において日本の気候変動に対する姿勢を逆行させています。」
マイティー・アース 日本プロジェクト統括マネージャーのロジャー・スミス氏は続けます。
「各国がさらなる炭素排出量削減を検討している中で、日本の住友商事は最も有害な燃料に投資することで問題を助長しているのです。」
マイティー・アースは、住友商事に、森林保護政策であるNDPE (No Deforestation, No Peat, No Exploitation = 森林伐採をやめること、泥炭地開発をなくすこと、搾取をやめること)を方針として適用し、実行するよう呼び掛けています。また、2030年までに全ての火力発電と石炭採掘から手を引く、と公約するよう求めています。
反省の色がない汚染の犯人– 住友商事の石炭事業
住友商事は、日本の石炭輸入において極めて重要な役割を担っています。国際社会において、気候危機が益々トップ記事で掲載される現在、日本はG7諸国において、未だに自国で石炭火力発電所を新設しようとしている唯一の国です。そして、この流れの中心にいる住友商事は、炭鉱を所有し投資を続け、毎年に日本に600万トンもの石炭を供給しているのです。
また住友商事は、汚染をもたらす石炭火力発電所の建設を、海外においても最前線でけん引しています。住友商事は現在、環境を汚染する火力発電所をベトナム、インドネシア、そしてバングラデッシュで新規建設しています。住友商事が関わっている石炭火力発電所の一つ、ベトナムのバンフォン1発電所は、特に物議を醸しています。というのも、この建設によってこの発電所が稼働することになれば、およそ1,900人の早死につながるという研究報告があるからです。
「再生可能エネルギーの普及が遅れる日本市場の中でも、他の企業に比べ、住友商事は立ち遅れています。ポリシーの大きな抜け穴により住友商事はいくらでも石炭火力発電事業に融資をすることが可能です。日本で新設される石炭火力発電所に比べて9倍汚染が高いとされるベトナム・バンフォン1石炭火力発電所へ融資を行っています。さらに、現在バングラデシュで1200MWの石炭火力発電所2つに出資し、石炭火力発電の広大を進めています。」とマーケットフォース代表ジュリアン・ビンセント氏は言います。
「パリ協定の目標を果たすのには石炭火力事業の新設は一切出来ないと科学者が同意する中、2019年に石炭火力発電所を新設するのは無謀です。国際投資家が石炭事業は資産価値が下がるものと考え、資産を石炭から移動している時、なぜ住友商事はリスクの高い投資を継続しているのか問われるでしょう。」
燃料欲しさに森林破壊 – 住友商事のバイオマス事業
日本で急速に増加している木質バイオマス消費は「危機製造マシーン」さながらです。2014年から2017年にかけて、発電用に日本に輸入された木質ペレットの量は5倍に増え、日本は一躍世界の木質バイオマス消費国の大国に躍り出ました。大気中の炭素を貯蔵する森林を守ることは気候危機との戦いにおいて重要なことであり、バイオマスのために伐採を続け、天然林が劣化することは、結果として、森林を炭素貯蔵量の少ないプランテーション(木の畑)に貶めることになります。しかも、伐採、加工処理し、日本へ海上輸送するのに、莫大な化石燃料を燃焼しています。
住友商事は、発電用木質ペレットとウッドチップを輸入している日本企業の最大手です。現在日本の木質ペレット輸入シェアの55%を住友商事が占め、2021年までにはバイオマス燃料全般で40%(1,600万トン)の輸入シェア獲得を目指しています。
2017年、住友商事がカナダのパシフィック・バイオエナジー・コーポレーションの株式を48%
取得したことにより、ブリティッシュコロンビア州の繊細な北方林の伐採が加速することへの懸念が広がっています。
また、住友商事はエンビバ・パートナーズと木質ペレット取引の契約を結んでいます。エンビバ・パートナーズは米国南東部の絶滅の危機にさらされている森林伐採に関わっています。ノースカロライナ州など米国南東部の州では以前から深刻な景観悪化が進行していましたが、他国からの木質ペレット需要の高まりがさらにその状況に拍車をかけています。
「米国南部の森林は地域社会にとって重要なだけでなく、世界で最も生物多様性に富んだ温帯林でもあるのです。」ドッグウッド アライアンスのキャンペーンディレクター、リタ・フロスト氏は訴えます。「ここの森林は現在、エンビバ社のけん引する木質ペレット産業による大きな伐採の脅威にさらされています。エンビバ社の伐採は住友商事などの海外企業によって促進されています。このままでは、私たちの森はさらに劣化し失われることになります。私たち米国南部から住友商事へ求めます – 輸入木質ペレットを使用するのをやめてください – 私たちの森は燃料ではないのです。」
気候変動対策に出遅れた住友商事
2019年8月に住友商事は「統合報告書2019」を発表しましたが、それは圧倒的に不十分なものでした。石炭火力発電所の新規開発を行わないと宣言したにも関わらず、紛れもない抜け穴を用意し、「不可欠」という判断を下した発電所に関しては、バンフォン1計画のように堂々と進めています。また、この方針は石炭火力発電所と石炭採掘から離脱する計画やそのスケジュール感に欠けています。
住友商事にとって、気候変動を緩和することと、石炭火力発電所の拡大の両方にコミットすることは不可能です。
「(しかし)住友商事が真のクリーンエネルギーを開発し、“気候のトップランナー”になる絶好の機会でもあるのです。」前述のスミス氏は言います。「気候変動が世界全体を危機に陥れている中、私たちは住友商事のような企業に解決策を講じてもらうことを願っています。言葉だけではなく、行動で示すことが大切です。」
マイティ・アースは住友商事に対し2020年の年次総会までに、石炭火力発電と炭鉱採掘からの離脱への詳細な実行計画を作成することを呼び掛けています。そして、森林から得る燃料としての木質バイオマスをやめ、「No Deforestation, No Exploitation = 森林伐採をやめること、搾取をやめること」を広く企業として適用し、真にクリーンな再生可能エネルギーに投資を移すことを求めます。
マイティ・アース(MIGHTY EARTH)について
マイティ・アースは、土地、海洋、気候を守るために活動する世界的なキャンペーン
団体である。目指すのは、世界で最も効果的な環境団体である。森林破壊と
人権侵害をサプライチェーンから排除する方針を採用するように世界大手の
食品会社と農業法人を説得する上で主導的な役割を果たし、クリーンエネルギー
に数十億ドル規模の資金の移転を行うよう推進してきた。国際的に変化を訴えたり、
あるいは地元レベルで呼びかけをし、環境保護の動きを盛り上げている。
気候変動対策団体、クリーンテック&クリーンスチールの 画期的な計画に参加した日本を称賛
即日発表用:
気候変動対策団体、クリーンテック&クリーンスチールの 画期的な計画に参加した日本を称賛
[東京] - 2021年11月3日 - マイティ・アースをはじめとする気候変動対策団体および市民社会組織は、本日、日本が「グラスゴー・ブレイクスルー」に署名したことを歓迎します。今回のクリーンテクノロジーを導入するというコミットメントは、気候変動の影響を受けやすい多くのセクターを対象としています。中でも鉄鋼は、それだけで世界の温室効果ガス排出量の7%を占めており、脱炭素化が最も難しいセクターの1つとされています。
国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で発表された「グラスゴー・ブレイクスルー」とは、パリ協定の目標達成に必要なクリーンテクノロジーおよび持続可能なソリューションの開発と導入を加速させるために国際的に協働し、それを誰もが手頃な価格で利用できるようにするという公約です。この公約では、世界市場における好ましい選択肢として、ニアゼロエミッション鉄鋼が必要であるとし、2030年までに全世界で効率的な使用とニアゼロエミッション鉄鋼生産体制を確立し、成長させると述べています。
今週初め、オーストラリア、日本、韓国の市民社会団体が、それぞれの政府に「グラスゴー・ブレイクスルー」への署名を促しました。署名した政府が同様の脱炭素化へのスケジュールに同意し、実施を支援するための国家政策を発表すれば、この協定によって、脱炭素化に意欲的な企業の先行者リスクを軽減することができます。
気候ソリューション(Solutions For Our Climate)のマネージング・ディレクターであるキム・ジュジン氏は次のように述べています。「鉄鋼部門は、韓国の年間温室効果ガス排出量の13%を占めています。私たちは韓国がグラスゴー・ブレイクスルーに取り組むことを歓迎し、鉄鋼部門の脱炭素化を支援する具体的な政策を期待しています」。
マイティ・アースの日本ディレクター、ロジャー・スミス氏も次のように述べました。「2050年までに排出量を実質ゼロにするには、各国が今日にも低炭素鉄鋼への移行を始める必要があります。私たちは、材料効率および鉄スクラップのリサイクルと利用に関して、日本が世界をリードする大きな可能性を見出しており、日本がグラスゴー・ブレイクスルーに取り組むことを歓迎しています」。
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国別署名者一覧:
- オーストラリア ー オーストラリアン・コンサベーション・ファウンデーション、ビヨンド・ゼロ・エミッションズ、カーボン・マーケット・インスティチュート、クライメート・アクション・ネットワーク・オーストラリア、グリーン・ビルディング・カウンシル・オブ・オーストラリア、グリーンピース・オーストラリア・アンド・パシフィック
- 日本 ー 気候ネットワーク、WWFジャパン
- 韓国 ー 環境運動連合(唐津支部、光陽支部、浦項支部)、気候ソリューション
- 国際 ー グリーン・アライアンス、グリーンピース・イースト・アジア(日本・韓国)、マーケット・フォーセズ、マイティ・アース
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問い合わせ先
ロジャー・スミス(マイティ・アース)ー [email protected]
マイティ・アースについて
マイティ・アースは、森林保護、海洋保全、気候変動への対応を目的としたグローバルな環境運動団体です。マイティ・アースの世界鉄鋼キャンペーンについてはこちらをご覧ください:www.mightyearth.org/steel
クライメート・カタリストについて
クライメート・カタリストは、政策の変更を通じて気候変動に対する行動を加速させることを目的とした国際的な組織です。詳しくはこちらをご覧ください:www.climatecatalyst.org
悪名高いパーム油・木材会社、コリンド社が森林管理協議会(FSC)から追放される
2021年7月15日
インドネシア・ジャカルタ:世界的な森林認証機関である森林管理協議会(FSC)がインドネシアのパプア州と北マルク州で操業する韓国・インドネシア系の悪名高い伐採・パーム油コングロマリットであるコリンド・グループの認証を取り消すことを決定したことをFSCの国際事務局長とコリンド社が認めた。
2017年にマイティー・アースが申し立てを行い、インドネシア、韓国および世界中の複数の団体が同社の悪事を暴露するために取り組んだ後に今回の決定が行われた。
マイティー・アースのアドボカシー担当アンニサ・ラフマワティ氏は、「FSCがコリンド社を追放したことは、同社が持続可能性を追求していると大げさな主張をしているにもかかわらず、21世紀の環境に配慮した責任あるビジネスの基本的な基準を満たすために重い腰を上げることができないことを証明している」と述べた。「FSCの決定は、グリーンウォッシュや法的な脅しを利用して森林を破壊し先住民族の権利を平気で踏みにじることができると考えている企業への警告となるだろう。」
FSC苦情処理委員会は、コリンド社が過去5年間に3万ヘクタール(サッカー場4万2千個分)以上の熱帯雨林を破壊し、FSC基準に反して先住民族の伝統的権利や人権を侵害してきたと認定した。パプア州にはインドネシア最大の手付かずの熱帯雨林があり、それは世界の気候にとって最も重要な地形のひとつとなっている。
それにもかかわらず、FSCはコリンド社と「条件付きで関係」を維持し、コリンド社に改善と是正措置の実施を求めていた。コリンド社が独立機関によるコンプライアンス検証の手続きに同意しなかったため、FSCの国際事務局長は本日、同社との関係を断絶すると発表した。
FSC国際事務局長のキム・カールステンセン氏は、今回の除名に関するBBCの記事の中で、「コリンド社の社会・環境パフォーマンスの改善を確認することができなかった」と述べた。 コリンド社は今回の決定についての声明の中で、認証の再取得を目指すと述べた。
「FSCはコリンド社が広大な森林破壊と先住民族の権利侵害によってFSCのポリシーに違反していたと判定したにもかかわらず、コリンド社は自らの行為の重大性について誤った情報を流し続け、FSCとの関係継続を自らの悪習をグリーンウォッシュするために利用してきた」とラフマワティ氏は述べた。「今日の発表で、コリンド社はもうFSCの後ろに隠れることはできなくなる。」
コリンド社は、FSCに対する義務を果たさないだけでなく、同社の悪事を暴き、是正を求めて活動してきた市民社会組織に対して、ドイツで口封じ訴訟(SLAPP)を起こし、批判者を黙らせようとしてきた。その結果、Coalition Against SLAPPs in Europe(欧州口封じ訴訟反対連合、CASE) が選抜した著名な欧州議会議員やNGO専門家の審査員団が 「International Bully of the Year」(今年世界で最も弱いものいじめした企業)という称号をコリンド・グループに授与した。
「コリンド社は明らかに誠意を持って行動していない。コリンド社がFSC基準の違反に対処するために環境と人権のパフォーマンスを改善することを真剣に考えているのであれば、破壊した森林の生息地を復元し、影響を受けたパプアの先住民族コミュニティに賠償金を支払い、同社の悪事に立ち向かおうとした市民社会グループに対する法的嫌がらせをやめるべきだ」と韓国環境運動連合のキャンペーン担当Hye Lyn Kim氏は語る。
コリンド社の影響を受けているコミュニティに関する調査でマイティー・アースが撮った高画質の写真とビデオは、こちらからダウンロード。
新報告書「隠蔽の煙幕:住友商事の『カーボンニュートラル』失敗の数々」
更新
2021年12月7日、マイティ・アースは報告書「隠蔽の煙幕:住友商事の『カーボンニュートラル』失敗の数々」の日本語改訂版を発表しました。住友商事が、パリ協定や1.5度シナリオに沿った事業を展開するためには、多くの課題があります。マイティ・アースは住友商事に対し、バングラデシュの「マタルバリ2」石炭発電所への関与を断念し、2040年までに世界のすべての石炭発電から撤退すること、木質バイオマスへの関与をやめ、天然林の大規模皆伐と、経済林への転換を含む森林破壊を行わない(NDPE)方針を全社的に採用することを求めます。
また住友商事の2021年の株主総会で、20%の株主が気候変動に関する決議に賛成したことはポジティブに受け止めており、株主に対して今後も同社とのエンゲージメントを継続することを強く求めます。
以下のレポートで、気候変動に関する住友商事への提言の全文をご覧ください。
2021年6月10日
(ワシントンDC)– 本日、公開されたマイティ・アース(Mighty Earth)の報告(英文)では、住友商事株式会社が世界各地の事業活動で、最も深刻な環境汚染や環境破壊の原因となる形態のエネルギー生産に深く関与していることを詳細に述べ、今回の株主提案がどれほどの緊急性を帯びるものであるのかを強調している。「隠蔽の煙幕:住友商事の『カーボンニュートラル』失敗の数々」と題された同報告では、同社は大規模な炭鉱を所有し、深刻な環境汚染を引き起こす石炭火力発電所を新たに東南アジアに建造し、石炭火力発電所で混焼する木材を輸入するなど、様々な事業分野において、日本の産業の石炭への依存を最も強力に支えている企業の1つであることが紹介している
「住友商事は、地上で最も深刻な環境破壊を引き起こす燃料を開発、輸送、燃焼し、またその資金提供や運送にも関与する、世界の石炭およびバイオマスの流通網の中心企業の1つです」と、マイティ・アースの日本プロジェクトマネージャーであるロジャー・スミスは述べている。「住友商事は、2050年までに『カーボンニュートラル』を実現するという、甘言で環境に優しい姿を装っていますが、同時に今後20年以上にわたって深刻な環境破壊を引き起こす化石燃料関連の事業計画を立てており、株主はこうした偽善をもう許せなくなっているのです。住友商事は速やかに化石燃料関連の事業から手を引き、クリーンで再生可能なエネルギーに移行していくための、厳しい気候変動行動計画を採用すべきである。」
住友商事は、排出量を削減するために適切な対策を講じてこなかったとして、6月18日に予定されている定時株主総会で、日本の商社としては初めて気候変動関連の株主提案により、投資家から改善を迫られることになる。この株主提案は、2020年のみずほフィナンシャルグループでの株主提案に続いて、日本で史上2件目の気候変動関連の株主提案である。「この動きは、各企業が実質的な気候変動行動計画の実施に至っていないことに対して、投資家の間で改善を迫る声が高まっていることを反映するものである」と、ワシントンDCに拠点を置く環境保護団体マイティ・アースは本日述べている。
「住友商事は明確な岐路に立たされています」とマイティ・アースのスミスは述べる。「ひとつの選択肢は、株主からの懸念の声に応え、世界各地での二酸化炭素排出量を2015年のパリ協定の目標に合致する水準まで削減し、再生可能エネルギー業界を率いる会社に転換する道です。そうできなければ、深刻な環境汚染を引き起こす20世紀型産業の枠組みに固執し、今後も損失を出し続けて、対策の遅れに伴って株主からの懸念も年々深刻化する事態に陥るでしょう」
同社が石炭への依存からの早期脱却に向けて動いていないことに関して、投資家の間で苛立ちが広がっている。2015年のパリ協定の目標が達成できるよう、同社に戦略の見直しを求める株主提案が出されるに至ったのも、そのためである。パリ協定では、産業革命前の水準と比較して、地球全体の気温上昇が2℃を十分に下回る水準に抑え、さらには1.5℃まで抑えることを目指すことが掲げられている。
2021年5月住友商事は、「気候変動の防止およびカーボンニュートラルな社会の実現に関連する様々な問題の解決に貢献する」という目標を掲げ、それに合わせて気候変動行動計画を更新した。しかし、同社の実際の気候変動問題に対する方針はパリ協定が求める水準には遠く及ばず、同社が森林からの燃料を燃やし、バングラデシュで新たに2基の石炭火力発電所の建造を今後開始し、ポートフォリオで天然ガスが占める割合を増やし、燃料炭鉱での採掘を2030年まで続け、石炭火力発電所を2040年代後半まで稼働させることが許容されている。住友商事では、短期的にも二酸化炭素排出量が高い水準であるにも関わらず、森林由来の輸入バイオマスへの依存が高い状態が続いており、北米の森林の生態系を含めて、森林の繊細な生態系の破壊防止を目的に策定すべき森林破壊に対する方針も策定していない。
住友商事は、発電所で燃やす木材ペレットを「バイオマス燃料」としてアメリカおよびカナダから輸入しており、その輸入量は大幅に増加し始めている。住友商事傘下のペレット会社は最近、ブリティッシュコロンビア州の老齢樹林(原生林)での伐採計画が明るみに出たことで、非難を集めている。また、同社のアメリカ南東部の主要サプライヤーは、すでに生態系にダメージが生じている森林で根元から伐採した樹木を使用している。アメリカおよびカナダで木材ペレットの生産量が急速に増加しており、また日本が世界で最も急成長中のペレット市場となっている現状に対して、科学者からは警告の声が上がっている。今年2月、500人の学者から、バイデン大統領、菅総理大臣、およびその他の世界の指導者宛に、化石燃料を燃やす代わりに樹木を燃やすことの危険を訴える公開書簡が送られた。同書簡では、「樹木は、気候変動に関しても生物多様性に関しても、生きていてこそ価値があるものです。正味ゼロエミッションの目標を今後達成するには、各政府は森林を燃やすのではなく、森林を保全して復元する努力を行うべきです」と警鐘が鳴らされている。
環境保護団体Market Forcesの福澤恵氏からも、同様の声が上がっている。「私たちは臨界点にいるため、パリ協定の目標を達成するのに必要な短期、中期目標が緊要です。住友商事の現在の計画はこの目標を達成するのには明らかに不十分です」と福澤は述べる。さらに福澤は「住友商事の計画は、気候にとって大惨事を引き起こすものであるのみならず、パリ協定に沿っていない、整合性のないタイムラインの化石燃料資産の撤退計画を考えると、座礁資産リスクへのエクスポージャーを抱える投資家に対しても危険である」と警鐘を鳴らしている。
こうした事業は、環境面で恐ろしいほどの代償を伴うものだ。しかし同時に、住友商事は事業活動をより環境に優しい生産方式に転換することを拒否することで、財政面でも大きな代償を払っている。2020年度、住友商事はオーストラリアの石炭火力発電所事業で260億円を、アメリカのマーセラスおよびイーグルフォードでの石油および天然ガス関連プロジェクトで80億円を、そして発電所の建造費用や建造遅滞に関連する損失として540億円を、それぞれ失っている。これらの損失は、住友商事全体の損失額である1531億円の半分以上を占めている。
以上
マイティー・アース(Mighty Earth)
[email protected]
(日本語対応可)
ISCO Japanese
ISCOスコアカードで持続可能なカカオの官民プラットフォームを検証する
4/8/2021
チョコレート業界では、この4年間、森林破壊や児童労働など、カカオセクターにおける問題に対処するための改革に着手する動きが増えています。
他の改革の動きと並行して、「ISCO」と呼ばれる持続可能なカカオのための官民の「プラットフォーム」が普及してきました。ISCOは、チョコレートを消費する国の産業界、政府機関、市民社会団体が集まり、カカオの持続可能性を推進しています。
ISCOは、産業界、政府、市民社会が協力して目標を設定し、その進捗状況を監視します。ISCOは、産業界が持続可能なカカオに移行するための大きな可能性を秘めています。私たちは、カカオ産業の社会的・環境的パフォーマンスを向上させるために、持続可能なカカオのためのプラットフォームに参加している組織、企業、機関を称賛します。
しかし、私たちは、大きな志があるにもかかわらず、ISCOが公約を行動に移すのは難しいのではないかと懸念しています。また、市民社会や一般市民からの圧力が加わらなければ、ISCOは産業界のグリーンウォッシュの道具になってしまうのではないかと心配しています。もし各ISCOが定義、目標、重要業績評価指標(KPI)、基準日などを異にした場合、持続可能なカカオの世界は混沌としたものになり、改善に向けた世界的な圧力が相乗的に作用することにつながらない恐れがあります。
そこで私たちは、分散よりも相乗効果を、混沌よりも秩序を、平凡よりも高い目標を推し進め、成功を明確にするために、ISCOスコアカードを作成しました。このスコアカードが、ISCOが潜在能力を発揮するための一助となることを願っています。カカオ産業が真に持続可能なものになるためには、消費国での改革が必要であり、改革を推進するためには、一貫性と明確性が必要です。
以下の表は、評価対象のプラットフォームの概要です。
表1:評価対象の持続可能なカカオのためのプラットフォーム
国名 | プラットフォーム | 設立 |
ドイツ | German Initiative on Sustainable Cocoa(GISCO) | 2012年6月 |
スイス | Swiss Platform for Sustainable Cocoa(SWISSCO) | 2018年1月 |
ベルギー | Beyond Chocolate (持続可能なベルギーのチョコレート産業のためのパートナーシップ、以下「BISCO」) | 2018年12月 |
日本 | 開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム(ここでは非公式に「JAPANISCO」とする) | 2020年1月 |
オランダ | Dutch Initiative on Sustainable Cocoa(DISCO)
|
2020年8月 |
フランス | フランスのSyndicat du Chocolat(「FRISCO」) | |
米国 | 米国は、産業界、政府、市民社会が一堂に会し、持続可能なカカオの輸入に向けた道筋を打ち立てるためのプラットフォームの開発に着手することができず。 | N/A |
英国 | 同様に、英国も無策により失敗。 | N/A |
12 の持続可能性に関する基準には、トレーサビリティーと透明性、森林破壊、アグロフォレストリー、化学物質の使用、児童労働などの問題に関するプラットフォームの構造、コミットメント、目標、活動、政策的立場などが含まれています。森林破壊などの基準は、 Mighty Earthのカカオに関する出版物をご覧になったことがある方にはおなじみのものです。特に、これらの基準の多くは、過去の世界チョコレート成績表でも紹介されています。成績表では、カカオの環境・社会面でのパフォーマンスをランク付けし、個々の基準でのパフォーマンスに「良い」「普通」「悪い」の印をつけ、企業全体のパフォーマンスに点数をつけています。カカオトレーダーやチョコレートメーカーが説明責任を果たし、採点を受けなければならないのと同様に、国レベルでカカオを改革しようとしているプラットフォームもまた、説明責任を果たす必要があります。
このISCOランキングの目的は、プラットフォーム間の競争を激化させることではなく、また、最近設立されたプラットフォームがより進歩していないことを理由にペナルティを課すことでもありません。むしろ、このランキングによってトップを目指す競争が生まれ、すべてのプラットフォームがお互いに学び合い、より良い結果を出すための動機付けとなることを願っています。
私たちは、持続可能なカカオのためのプラットフォームがカカオセクターにもたらす価値を認識し、カカオセクターの持続可能性の中心となる問題について、プラットフォームが相乗効果のある共通の公約をより明確にすることを目指しています。さらに、私たちの目的は、プラットフォームがその潜在能力を発揮し、これらの複雑な課題に対する協力的なアプローチの明確なニーズを満たすことができるように、ロードマップを用いてプラットフォームを支援することです。
新しく設立されたプラットフォームの場合、このスコアカードは、プラットフォームが重要な問題にどのように対処するかについての議論を形づくる上で役立ちます。また、米国や英国のようにプラットフォームの開発を考えている市場にとっては、このスコアカードがスタート地点となります。
例えば、日本でのJAPANISCOの設立は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという日本政府の称賛に値する公約とほぼ同じ時期のことで、幸運なタイミングでした。日本は世界のリーダーとして、他の国々が同様の公約を実現するためのモデルとなることを目指しており、チョコレート業界を含め、日本のすべての産業界が国の公式目標を達成するために行動を起こすことが重要となります。JAPANISCOのおかげで、今後、日本のチョコレート業界は、大気中のCO2濃度を下げることができる輸入森林破壊ゼロとアグロフォレストリーの推進を共同で目指すことができるフォーラムとシステムを手に入れることができました。日本の産業界には迅速に革新する能力があるので、JAPANISCOがカカオ業界で成功し、パーム油などの他の主要な原料を含む、日本の食品・農業業界のすべての品目の森林破壊ゼロのプラットフォームの重要なモデルに発展することを信じ、期待しています。
私たちは、すべてのプラットフォームが、本書に書かれているすべての批評に早急に対処し、カカオ産業を真の持続可能性への道へと導くことを奨励します。
レポートを読む (英語)
世界チョコレート成績表: 日本企業は児童労働と持続可能性の取り組みスコアが芳しくない結果に
世界チョコレート成績表: 日本企業は児童労働と持続可能性の取り組みスコアが芳しくない結果に
2021 年 3 月 19 日
マイティー・アース(Mighty Earth)
2021世界チョコレート成績表:「ワースト賞」はストークが受賞、アルテル・エコ、トニーズ・チョコロンリー、そしてウィッタカーズが「優良賞」を受賞、ゴディバは2020年の最下位からランクを上げる
ワシントンDC – 環境問題と人権問題に先頭に立って取り組む非営利団体であるマイティー・アース(米国)、ビー・スレイバリー・フリー(オーストラリア、オランダ)、グリーン・アメリカ(米国)、インコタ(ドイツ)、および全米野生生物連盟(米国)が、毎年発表するチョコレート成績表を公開しました。チョコレート成績表は、世界最大手のカカオ取引会社、チョコレートメーカー、および小売会社を評価するものです。チョコレートメーカーはいまだにカカオ生産に関連する社会問題や環境問題の解決に至っていない実態が、成績表から明らかになりました。日本はアジア最大のチョコレート市場で、2018年の小売売上高は約5100億円を記録しました。しかし、日本企業は調査対象となった企業の最下位付近との結果になりました。
ドイツに生産施設を構え、21の子会社を世界各地に展開する菓子メーカーである
ストークが最下位となり、責任ある対応と透明性の欠如からワースト賞の受賞に至りました。同社のブランドには、ヴェルタース・オリジナル、リーゼン、トフィフィ、メルシー、カラフル・ワールド、そしてベンディックスがあります。
「優良賞」は、トップ3にランクインした以下の企業が受賞しました。
- アルテル・エコ。米国に拠点を置く企業で、商品は米国とヨーロッパで流通しています。今回初めて優良賞を受賞しました。
- トニーズ・チョコロンリー。オランダに拠点を置く多国籍企業で、2年連続で優良賞を受賞しました。
- ウィッタカーズ。ニュージーランドに拠点を置く企業で、商品は主にオーストラリアとニュージーランドで販売されています。同地域は2年連続で優良賞を受賞しています。
昨年までのワースト賞の「受賞者」となった各企業は、全体として持続可能性の取り組みを大きく向上させました。2020年にワースト賞を受賞したゴディバは、生計維持所得と環境保護に関するポリシーを大きく前進させました。また、2019年にワースト賞を受賞したスクダンは、持続可能性の全てのカテゴリーで前進を見せました。
「この成績表があれば、米国、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド、日本などの国々の消費者は、どの企業が持続可能性の推進に成功しているのか、そしてどの企業のお菓子には森林破壊と人権侵害という傷がついているのかを知った上で、チョコレートの購入判断ができます」と、全米野生生物連盟でシニアアドバイザーを務めるエテル・イゴネットは述べています。
各団体は、31社のチョコレートメーカーとカカオのサプライヤーの調査を行いました。各企業のウェブサイト、ESGレポートや他の広報をチェックした上で、各企業とコミュニケーションを取って、情報を確認しました。これらの各企業が世界のチョコレート生産に占める割合は80%を超えていると見積もられています。チョコレート業界が直面している中で最も喫緊の持続可能性に関する問題の6つである、人権リスクの特定、トレーサビリティと透明性、森林破壊と気候、アグロフォレストリー、生活賃金、そして児童労働への取り組みをカテゴリーとして、各企業の総合評価が算出されました。
カカオ会社、特にガーナとコートジボワールを対象地域とするカカオと森林・イニシアチブに参加している会社は、それぞれのサプライチェーンのトレーサビリティ向上につながる重要なステップとして、2018年から100万を超える農園のマッピングを行っています。大手のチョコレートメーカーのほとんどは、コートジボワールのサプライチェーンの少なくとも一部を、マイティー・アースのカカオ・アカウンタビリティ・マップで公開しています。
「世界全体で、トレーサビリティのカテゴリーで、ここ数年で最大の前進が見られました」と、グリーン・アメリカで労働問題関連キャンペーンのディレクターを務めるシャーロット・テイトは述べています。「成績表のその他全ての問題に取り組むためには、各企業はまず、カカオがどこから来ているのかを知る必要があります。それがわからなければ、児童労働、農家の貧困、または森林破壊に終止符を打てる可能性はほぼありません。各企業は、サプライチェーン全体で完全なトレーサビリティを確保し、それに加えて透明性のある報告を行っていかなければなりません」
日本企業は農園までのトレーサビリティではまだ苦しんでいますが、改善の兆しも見られます。森永製菓株式会社(森永)は2025年までにカカオ豆の調達で100%のトレーサビリティの確保を計画しており、不二製油株式会社は取り扱うカカオを2030年までに第三者による認定済みのカカオ豆からの調達に切り替えるとのポリシーを打ち出しています。
トレーサビリティの傾向に加えて、成績表では農家の収入に関する情報も紹介されています。「チョコレート業界に集まる金のうち、カカオの生産国やカカオ農家に流れる割合が不十分です」と、オーストラリアのビー・スレイバリー・フリーの共同ナショナルディレクターを務めるファズ・キットは述べています。「ほとんどのカカオ農家は日収が1ドル以下で、農園で働く女性はわずか日々0.30ドルの収入しか得ていません。コロナ禍による経済の混乱から、特に大きな影響を受けています」。伊藤忠商事株式会社、明治ホールディングス株式会社、および森永は、農家の貧困対策のための具体的なポリシーを設定していませんでした。
イースターのグローバル成績表では、日本企業が過去4年間で徐々にではあるものの着実に前進している傾向も浮かび上がりました。しかしそれでも、日本のチョコレートメーカーは、さらに厳しいトレーサビリティのポリシーを打ち出してモニタリングとルールの徹底を行うことで、カカオのサプライチェーンにおける児童労働、貧困、そして森林破壊に終止符を打たなければなりません。日本の業界は、SDGの目標達成のために迅速に改革を行わなければ、海外勢に差をつけられることになります。
マイティー・アースで日本プロジェクトマネージャーを務めるロジャー・スミスは、「国際協力機構(JICA)が2020年に新たに立ち上げた『開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム』は、政府、業界、そしてNPOをまとめて業界全体での基準策定につながり、持続可能性に関する問題の解決への鍵になるかもしれません」と述べています。
高級チョコレートメーカーのゴディバは、2020年4月の成績表では、ポリシーが不十分であることを理由に、ワースト賞を受賞しました。2020年7月、カカオが育つ森とカカオを育てる人々を守ることを目標に、ゴディバはアースワーム・ファウンデーションと提携しました。ゴディバは、森林破壊、アグロフォレストリー、トレーサビリティ、児童労働、生計維持所得、そして殺虫剤の使用に関して定めた企業ポリシーを新たに導入しました。特筆すべき点として、西アフリカの調達先において、2025年までに農園単位でのカカオ豆のトレーサビリティを100%確保すること、そして農園の100%で児童労働のモニタリング・対策システムを打ち立てることが定められています。これらの新たなポリシーを完全に実行に移すにはさらに努力が必要ですが、ゴディバは業界最下位から中央付近までわずか1年で急上昇しました。つまり、同様の努力を行えば、日本企業も同じようにランキングを伸ばせるはずだということです。
「またこの成績表からは、アグロフォレストリーや、もっと気候に優しい栽培方法を取り入れるペースが、必要なペースに全く達していないこともわかります」と、マイティー・アースでシニアアドバイザーを務めるサミュエル・マウターは述べています。カカオ業界を問題山積のモノカルチャー農業から転換していくには、アグロフォレストリーを通して森林と農地回復にさらに注力していかなければなりません。「各企業は、樹木の苗を配布するだけではなく、カカオ農園に植えられた樹木を守り育てていくことに投資していかなければなりません。そうして樹木が大きく生長できるようにすることで、西アフリカ全体で大規模にアグロフォレストリーの採用を確実に促進できるのです」
「この成績表を見れば、うわべだけで環境保護を謳っているのはどの企業か、そして本当に意味あるアクションを起こしているのはどの企業か、はっきりしてきます」と、インコタでキャンペーンコーディネーターを務めるヨハネス・ショアリングは述べています。「何十年にもわたって業界は自主的なコミットメントを定めてきましたが、貧困も、危険な児童労働も、森林破壊も、カカオ業界にはまだ広く蔓延っています。ほとんどの企業はリスクの特定に取り組み始めたばかりで、まだ多くのギャップが残っています。このように各企業の取り組みが足りないことから、より厳しいデューディリジェンスの法整備が必要であることがわかります。」
- 成績表の採点方法はこちらで公開しています。
- イースター成績表2021(英語)はこちらで公開しています。
- 昨年までの成績表(英語)はこちらで公開しています。2020、2019、2018。
- 日本とチョコレートに関する問題についてのファクトシートはこちらで公開しています。
- 日本のチョコレートメーカーに関するプレゼンテーションはこちらで公開しています。
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ビー・スレイバリー・フリーについて
ビー・スレイバリー・フリーは、市民団体、コミュニティー、およびその他の組織からなる連盟で、ともにオーストラリア、オランダ、そして世界各地で現代版の奴隷労働の防止、廃止、撤廃に向け活動を行っています。ビー・スレイバリー・フリーには、現代版の奴隷労働の防止、撤廃、対策を現地で行ってきた経験があります。特に、サプライチェーンにおける奴隷労働に光を当てることに注力しています。ビー・スレイバリー・フリーが生み出した動きにより、オーストラリアでは現代奴隷法の可決が実現しました。2007年以降はチョコレート業界との取り組みを行い、カカオ生産における児童労働と奴隷労働の問題への対応を求めてきました。ビー・スレイバリー・フリーに関してさらなる情報は、https://beslaveryfree.com で公開しています。
グリーン・アメリカについて
グリーン・アメリカは、米国を代表するグリーン・エコノミー推進組織で、米国の消費者、投資家、企業、そして市場が誇る経済力を活用して、社会正義にかなった、環境面でも持続可能な社会の創出をミッションとしています。1982年に立ち上げられたグリーン・アメリカは、企業や個人に経済面の戦略、組織力、そして実践的なツールを提供することで、今日の社会問題や環境問題の解決を目指しています。グリーン・アメリカに関してさらなる情報は、http://www.GreenAmerica.org で公開しています。
インコタについて
インコタは過去50年にわたって、飢餓と貧困に終止符を打って誰もが享受できるグローバル化を実現することを目標に、活動を続けてきました。的を絞ったキャンペーンを通して、インコタはドイツ国内でグローバル化の負の側面や人権の重要性に関する人々の意識を高めることを狙いとしています。インコタが展開している「チョコレートを公平にしよう!」キャンペーンでは、西アフリカのカカオ農家の生活水準向上のための活動を行っています。さらにインコタでは、開発途上国の市民団体のパートナーと協力し、各団体が各国で正義と平等を求める活動を行うのを支援しています。
マイティー・アースについて
マイティ・アースは、森林の保護、海洋の保全、気候変動への対応などに取り組む世界的な環境キャンペーン組織で、東南アジア、ラテンアメリカ、アフリカ、北米で活動しています。在来の生態系と野生生物を保護し、水を保全し、地域社会の権利を尊重するという環境配慮型の責任ある農業に向けた大規模な行動を推進しています。マイティー・アースのチームは、世界大手の食品・農業企業が環境・社会ポリシーや慣行を劇的に改善するよう説得する上で、決定的な役割を果たしてきました。www.mightyearth.org/japanchocolate
連絡先:日本の連絡先:ロジャー・スミス、[email protected]
全米野生生物連盟について
全米野生生物連盟は米国最大の自然保護団体で、600万人を超える会員を誇ります。様々な境遇の米国人が協力して、野生生物の声なき声をすくいあげる活動をしています。全米野生生物連盟は、1936年から最前線で野生生物のための活動をしてきました。その中で求めてきた自然保護を重んじる価値観とは、米国全体のこれまでの遺産の中に深く浸透しているものです。全米野生生物連盟が海外で行うプログラムにおいては、天然資源の経済学、リモートセンシングと全地球的情報システム、国際法、そして熱帯地域の生態学に関する専門知識を組み合わせることで、それぞれの市場に特化したソリューションや公共政策を推進し、熱帯雨林の喪失を食い止めています。全米野生生物連盟では、「森林破壊ゼロ」農業を推進し、森林や野生生物への影響が最も大きい作物に活動の焦点を当てています。全米野生生物連盟に関してさらなる情報は、https://international.nwf.org/about/ で公開しています。
世界第3位の鉄鋼企業である日本製鉄が公式にカーボンニュートラルを約束
今週、日本の鉄鋼企業である日本製鉄の橋本英二社長が、2050年までにカーボンニュートラルを達成する計画を発表しました。この発表は、日本の菅義偉首相や世界最大の鉄鋼企業アルセロール・ミッタルが、同じように2050年までのカーボンニュートラル達成を誓ったすぐ後になされたものです。
マイティ・アースの日本プロジェクト統括マネージャーであるロジャー・スミスは、これに対して次のように述べています。
「世界第3位、日本では最大の鉄鋼企業である日本製鉄が今や、気候変動を打ち破るミッションにおけるグローバルプレーヤーになることを公式に約束しました。鉄鋼業界全体にとって、またそのサプライヤーや、トヨタや他の自動車メーカーといった顧客にとっても、自分たちが地球の気候に与える大きな影響に立ち向かううえで弾みとなる重要なステップであり、私たちはこの日本製鉄の誓いを歓迎いたします。」
日本製鉄は自社の業務を改革するだけでなく、内部から働きかけて経団連の気候変動政策についての立場を変更させることを通じて、自らの真剣さを証明する必要があります。あまりに長い期間、経団連は石炭の段階的廃止と国内の再生可能エネルギーの拡大に向けた動きを、国家レベルで遅らせようと活動してきました。
「日本製鉄が水素の研究・開発・導入に真剣に取り組んでいる様子を目にして、私たちは喜んでいます。しかし、排出量目標を達成するうえで二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)技術に過度に依存していることには、注意を払っています。業界において汚い石炭や森林バイオマスの燃焼技術を完全に転換し、これをきれいな電化、材料効率、また業界規模の適正化と組み合わせる必要があります。同社の計画については、新たな合弁事業のAM/NSインディアでどのようにカーボンニュートラルの達成を目指すのかを、とりわけ関心をもって見守っています。」
「また、日本製鉄はこの問題の緊急性を認識しているように思えます。主に石炭を燃焼させる溶鉱炉ですが、老朽化したいくつかの施設について電気炉への移行を始めようとしており、最終的には水素を使用した鉄鋼生産の拡大を目指しています。そのいずれも電力供給は再生可能エネルギーで行えます。しかしながら、この移行には、石炭やバイオマスを燃焼させる新たな施設をどこにもいっさい建造しないというモラトリアムと、石炭を燃焼させる既存施設の段階的廃止計画も含まれている必要があります。これによって、カーボンニュートラルな鉄鋼生産が現実になることが保証されます。森林バイオマスには短期的な炭素への影響がかなりあることは、多くの場合見落とされています。森林に隔離されている炭素が、燃料に転換され、燃やされ、大気中に戻っていくのです。」
「私たちは今も、期限を定めた、実行可能でより具体的な手順を日本製鉄が示すのを待っています。それは宝鋼集団、HBIS、ニューコア、沙鋼、POSCO、タタその他の同業者を焚きつけ、野心的なコミットメントや計画を駆り立てるものであるべきです。 ただし、1.5度の温暖化シナリオを実現できるように、産業界と政府はともに十分な投資をし、科学に基礎を置くコミットメントを行う必要があります。行動する用意があるというシグナルを産業界が送っているのであり、日本政府はこの困難な目標を早期に実現するために、鉄鋼企業や他の重工業による二酸化炭素排出を抑え込む技術への投資に対して、グリーンリカバリーの形で公的な支援を行うべきです。」
マイティ・アースのグローバルな鉄鋼キャンペーンの詳細を知り、アルセロール・ミッタルに関する最新のミニレポートを読むには、www.mightyearth.org/steel にアクセスしてください。
消費者は日本の旅行会社が森林破壊を推進することに抗議します
Available in English here.
ワシントンDC - 環境キャンペーン組織マイティアースの新しい報告書は、環境問題を憂慮する世界中の何千人もの旅行者が、日本の旅行大手H.I.S.インターナショナルに対する不買運動への賛同を表明したと述べています。この報告書は、日本で2番目に大きい旅行会社と、気候に不可欠な熱帯雨林を脅かし、絶滅危惧種のオランウータンの生息地を破壊する東南アジアの環境破壊との間の意外ながら明確な繋がりに対する消費者の抗議の声を伝えています。これらの最新の消費者行動は、大気を汚染する発電事業への進出のために衆目にさらされているH.I.S.に焦点を当てた市民運動の高まりの一環です。
報告書「Think Twice About Traveling with Forest Destroyer H.I.S.」は、最近のキャンペーンをハイライトし、事業ポートフォリオにエネルギー生産を加えようとする同社の取り組みを伝え、同社が宮城県角田市で建設中のパーム油を燃焼する発電所が生態系の破壊の推進力になりかねないことを指摘しています。
「パーム油産業は、毎年約25万エーカー(約10万ヘクタール)の森林破壊を引き起こしています。パーム油プランテーションの野放図な拡大は、貴重な熱帯雨林を破壊し、絶滅危惧種のオランウータンの生存を脅かし、気候変動を悪化させます」と、マイティアースの副代表ローズ・ガーは述べています。「H.I.S.の発電所は、毎年70,000トン以上のパーム油を輸入する必要があり、これらの傾向に拍車をかけるでしょう。そのパーム油が調達基準の対象であったとしても、真に持続可能なパーム油の供給は非常に限られています。 それを燃料として燃やすことは非常に無駄なことです。世界中で市民の抗議が見られたのはそのためです。」
H.I.S.は、ロボットが常駐するホテルや昔のオランダを再現した長崎のテーマパークなど、独特な目的地を訪れるために日本に観光客を連れてくる国際的な旅行会社です。しかし、2017年にH.I.S.は 新事業に参入し、日本の消費者に格安の電力を販売するためにH.I.S.SUPER電力を設立しました。電力の仲介業者でいることに飽き足らず、 H.I.S.SUPER電力は、オランダをテーマにした遊園地にソーラーパネルを設置するだけでなく、大量のパーム油を燃焼する大規模な発電所にも投資して、独自の発電所を建設し始めました。
日本の環境保護団体は 同プロジェクトに対する憂慮の念を伝え、2019年2月に同社社長とも面談しました。2019年7月、世界中の約20万人の消費者がH.I.S.にこの発電所建設計画を廃棄し、パーム油事業から撤退して森林を保護するよう要求しました。しかしH.I.S. 経営陣は請願を受け入れることを拒否し、発電所の建設を進めました。
H.I.S.が反応しなかったことは、さらなる国際キャンペーンの引き金となりました。 国際的なNGO連合は、米国、ヨーロッパ、オーストラリアの主要なH.I.S.の支社に対して、発電所プロジェクトに関する懸念を再度表明する手紙を送りました。NGOは同様の手紙をH.I.S.の主要な投資家にも送りました。今週、複数のプラットフォームでデジタル広告も展開されています。 最近のキャンペーンの結果、旅行に頻繁にでかける多くの人々を含め、さらに7,200人がパーム油発電への関与をH.I.S.がやめるまで、同社の旅行の申し込みとホテルの宿泊をしないことを誓約しました。H.I.S.は、これまでのところ、消費者の抗議に直面しても沈黙を守っており、新型コロナウィルス感染症拡大による遅延が発生したものの、発電所は今後数週間で運転を開始する可能性があります。
「パンデミックの最悪の時期が過ぎたと期待されるので、これまで鬱積していた旅行の需要が急増するでしょう」とGarrは述べました。「来年オリンピックが開催されれば、海外からの旅行者が日本に集まるでしょう。しかし、アメリカ人、オーストラリア人、ヨーロッパ人は、熱帯雨林の破壊を推進している会社の旅行に申し込んだり、そのホテルに滞在したりすることを望んでいません。」
「現在のパンデミックに代表されるリスクと日本の国内旅行の減少のため、エネルギー事業による多角化を図りたいというH.I.S.の意向も理解できます。しかし、そのパーム油発電の新規事業は短絡的であり、コアビジネスを脅かす消費者の反発を生み出すリスクがあります。H.I.S.には、まだ、パーム油火力発電計画をやめ、代わりに太陽光発電や日本で伸び始めている風力発電市場に投資するという正しい選択をするチャンスがあります。」
以上
2020年10月22日
|鉄鋼
菅義偉首相が2050年までに日本の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指す方針を表明するという報道に続き、日本の鉄鋼企業である日本製鉄は、脱炭素に向けた準備を進めており、半年以内に2030年と2050年の排出削減目標を発表すると明らかにしました。今月は他にも進展がありました。鉄鋼大手のアルセロール・ミッタルが2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を発表しています。
この最新ニュースを受けて、マイティ・アースのキャンペーンディレクターであるマーガレット・ハンズブロー(Margaret Hansbrough)は、以下の声明を発表しました。
「初めにアルセロール・ミッタル、そして今度は日本製鉄という、鉄鋼企業トップ3のうち2社が、脱炭素に向けた注目すべき行動を起こしています。これは気候変動に対する業界の姿勢の重要な変化を示すものです。この業界は全気候汚染の7%に責任を負っているにもかかわらず、長い間二酸化炭素排出に対する説明責任をはぐらかしてきました。しかし、産業面での脱炭素をめぐる語り口は変化し始めています。活動家の圧力が効いてきているのです。」
「2030年の目標が含まれていることは、日本製鉄が短期間での野心的な二酸化炭素排出削減の必要性を認識していることを示しています。私たちは、より多くの目標が含まれようになることを願っています。また、鉄鋼の脱炭素に向けた最善の方法について、アルセロール・ミッタルに対してと同様に、同社にも関与していきます。また、この2企業のコミットメントが、昨年のインド鉄鋼大手エッサール・スチールの共同買収を踏まえて、短期的に実行可能であるかを注意深く監視していきます。」
「ヨーロッパと日本の大企業は行動を起こし、政治指導者は強い意欲を表明しました。中国と宝鋼集団など中国の大企業が鉄鋼産業のコミットメントを強化するのを、私たちは待っています。」
「すでに公表されたものにしても、今後行われるものにしても、約束は1.5度の目標を実現する長い道のりにおける最初の一歩に過ぎません。約束だけでは不十分です。これらの排出目標を達成するには、明確な原則と行動を記した具体的で実行可能な計画が必要です。カーボンニュートラルの実現には、地球規模で、期限を定めた重要な目標を達成しグリーンリカバリー政策を行って、産業面での脱炭素を進めることが不可欠です。」
写真出典:Postmodern Studio via Shutterstock
October 23, 2020
新報告書 『住友商事が引き起こす環境破壊 :石炭とバイオマスが影を落とす日本の未来』
新報告書
『住友商事が引き起こす環境破壊 :石炭とバイオマスが影を落とす日本の未来』
(2019/12/10 14:00 東京)
国際社会がマドリードにおいて、気候変動との戦いを今後どう進めていくか議論している 最中、石炭や木質バイオマスといった汚く間違ったエネルギーを推進し投資する大手企業が、日本の政策によって力を強めているということが明るみになりました。マイティー・アースの最新報告書『住友商事が引き起こす環境破壊:石炭とバイオマスが影を落とす日本の未来』は、東京に本社を置く大手総合商社が、いかに世界規模の石炭やバイオマスのネットワークの中心に位置取り、地球上で最も有害な燃料の採掘、伐採、資金調達、輸送、燃焼に携わっているかを鮮明に描いています。米国南東部からカナダのブリティッシュコロンビア州そしてベトナムまで、住友商事は日本の発電事業のために世界の森林を危機に陥れています。
「住友商事は、国内外において日本の気候変動に対する姿勢を逆行させています。」
マイティー・アース 日本プロジェクト統括マネージャーのロジャー・スミス氏は続けます。
「各国がさらなる炭素排出量削減を検討している中で、日本の住友商事は最も有害な燃料に投資することで問題を助長しているのです。」
マイティー・アースは、住友商事に、森林保護政策であるNDPE (No Deforestation, No Peat, No Exploitation = 森林伐採をやめること、泥炭地開発をなくすこと、搾取をやめること)を方針として適用し、実行するよう呼び掛けています。また、2030年までに全ての火力発電と石炭採掘から手を引く、と公約するよう求めています。
反省の色がない汚染の犯人– 住友商事の石炭事業
住友商事は、日本の石炭輸入において極めて重要な役割を担っています。国際社会において、気候危機が益々トップ記事で掲載される現在、日本はG7諸国において、未だに自国で石炭火力発電所を新設しようとしている唯一の国です。そして、この流れの中心にいる住友商事は、炭鉱を所有し投資を続け、毎年に日本に600万トンもの石炭を供給しているのです。
また住友商事は、汚染をもたらす石炭火力発電所の建設を、海外においても最前線でけん引しています。住友商事は現在、環境を汚染する火力発電所をベトナム、インドネシア、そしてバングラデッシュで新規建設しています。住友商事が関わっている石炭火力発電所の一つ、ベトナムのバンフォン1発電所は、特に物議を醸しています。というのも、この建設によってこの発電所が稼働することになれば、およそ1,900人の早死につながるという研究報告があるからです。
「再生可能エネルギーの普及が遅れる日本市場の中でも、他の企業に比べ、住友商事は立ち遅れています。ポリシーの大きな抜け穴により住友商事はいくらでも石炭火力発電事業に融資をすることが可能です。日本で新設される石炭火力発電所に比べて9倍汚染が高いとされるベトナム・バンフォン1石炭火力発電所へ融資を行っています。さらに、現在バングラデシュで1200MWの石炭火力発電所2つに出資し、石炭火力発電の広大を進めています。」とマーケットフォース代表ジュリアン・ビンセント氏は言います。
「パリ協定の目標を果たすのには石炭火力事業の新設は一切出来ないと科学者が同意する中、2019年に石炭火力発電所を新設するのは無謀です。国際投資家が石炭事業は資産価値が下がるものと考え、資産を石炭から移動している時、なぜ住友商事はリスクの高い投資を継続しているのか問われるでしょう。」
燃料欲しさに森林破壊 – 住友商事のバイオマス事業
日本で急速に増加している木質バイオマス消費は「危機製造マシーン」さながらです。2014年から2017年にかけて、発電用に日本に輸入された木質ペレットの量は5倍に増え、日本は一躍世界の木質バイオマス消費国の大国に躍り出ました。大気中の炭素を貯蔵する森林を守ることは気候危機との戦いにおいて重要なことであり、バイオマスのために伐採を続け、天然林が劣化することは、結果として、森林を炭素貯蔵量の少ないプランテーション(木の畑)に貶めることになります。しかも、伐採、加工処理し、日本へ海上輸送するのに、莫大な化石燃料を燃焼しています。
住友商事は、発電用木質ペレットとウッドチップを輸入している日本企業の最大手です。現在日本の木質ペレット輸入シェアの55%を住友商事が占め、2021年までにはバイオマス燃料全般で40%(1,600万トン)の輸入シェア獲得を目指しています。
2017年、住友商事がカナダのパシフィック・バイオエナジー・コーポレーションの株式を48%
取得したことにより、ブリティッシュコロンビア州の繊細な北方林の伐採が加速することへの懸念が広がっています。
また、住友商事はエンビバ・パートナーズと木質ペレット取引の契約を結んでいます。エンビバ・パートナーズは米国南東部の絶滅の危機にさらされている森林伐採に関わっています。ノースカロライナ州など米国南東部の州では以前から深刻な景観悪化が進行していましたが、他国からの木質ペレット需要の高まりがさらにその状況に拍車をかけています。
「米国南部の森林は地域社会にとって重要なだけでなく、世界で最も生物多様性に富んだ温帯林でもあるのです。」ドッグウッド アライアンスのキャンペーンディレクター、リタ・フロスト氏は訴えます。「ここの森林は現在、エンビバ社のけん引する木質ペレット産業による大きな伐採の脅威にさらされています。エンビバ社の伐採は住友商事などの海外企業によって促進されています。このままでは、私たちの森はさらに劣化し失われることになります。私たち米国南部から住友商事へ求めます – 輸入木質ペレットを使用するのをやめてください – 私たちの森は燃料ではないのです。」
気候変動対策に出遅れた住友商事
2019年8月に住友商事は「統合報告書2019」を発表しましたが、それは圧倒的に不十分なものでした。石炭火力発電所の新規開発を行わないと宣言したにも関わらず、紛れもない抜け穴を用意し、「不可欠」という判断を下した発電所に関しては、バンフォン1計画のように堂々と進めています。また、この方針は石炭火力発電所と石炭採掘から離脱する計画やそのスケジュール感に欠けています。
住友商事にとって、気候変動を緩和することと、石炭火力発電所の拡大の両方にコミットすることは不可能です。
「(しかし)住友商事が真のクリーンエネルギーを開発し、“気候のトップランナー”になる絶好の機会でもあるのです。」前述のスミス氏は言います。「気候変動が世界全体を危機に陥れている中、私たちは住友商事のような企業に解決策を講じてもらうことを願っています。言葉だけではなく、行動で示すことが大切です。」
マイティ・アースは住友商事に対し2020年の年次総会までに、石炭火力発電と炭鉱採掘からの離脱への詳細な実行計画を作成することを呼び掛けています。そして、森林から得る燃料としての木質バイオマスをやめ、「No Deforestation, No Exploitation = 森林伐採をやめること、搾取をやめること」を広く企業として適用し、真にクリーンな再生可能エネルギーに投資を移すことを求めます。
マイティ・アース(MIGHTY EARTH)について
マイティ・アースは、土地、海洋、気候を守るために活動する世界的なキャンペーン
団体である。目指すのは、世界で最も効果的な環境団体である。森林破壊と
人権侵害をサプライチェーンから排除する方針を採用するように世界大手の
食品会社と農業法人を説得する上で主導的な役割を果たし、クリーンエネルギー
に数十億ドル規模の資金の移転を行うよう推進してきた。国際的に変化を訴えたり、
あるいは地元レベルで呼びかけをし、環境保護の動きを盛り上げている。